アニサキス症
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アニサキス症

アニサキスとは、回虫目アニサキス科アニサキス属の線虫の総称で、いわゆる寄生虫の一種です。アニサキスは本来、海中の卵がオキアミなどに摂食されることで宿主へ侵入し、さらにそのオキアミなどをサバ・アジ・サンマ・イカなどの魚介類が捕食してそこで幼虫として過ごし、最終的にはクジラやイルカなどの海生哺乳類に食べられることでそこを終宿主として成虫となります。その中間段階でヒトが魚介類を食すことによって、アニサキス症を発症します。
ヒトに摂食されたアニサキスの幼虫は、胃や腸の粘膜に侵入しようとして突き刺さったような状態となります。その物理的刺激に加えて、主にそれに続いて生じるアレルギー反応によって強い炎症が引き起こされます。これが胃で起こると胃アニサキス症、小腸や大腸で生じると腸アニサキス症となります。アニサキス症の9割以上は胃アニサキス症、次いで小腸で、大腸アニサキス症はまれとされています。また虫体が消化管壁を突き破って消化管外に出ると、そこで肉芽腫を形成する消化管外アニサキス症を生じることもまれにあります。
本邦は寿司や刺身などの魚介類の生食文化があるためとくに本症の発生が多く、原因としてはサバが最多とされています。
症状は寄生部位により異なります。胃アニサキス症では、摂取後数時間以内(多くは2~8時間後)に、突然の激しい心窩部痛(みぞおちの痛み)、悪心(吐き気)・嘔吐を生じ、冷汗を伴ったりもします。痛みは非常に強く、急性腹症として救急受診される方も少なくありません。腸アニサキス症では、摂取後数十時間~遅いと数日経ってから下腹部痛、腹部膨満などを生じ、炎症が強いと腸閉塞様となることもあるため、緑色~茶色で悪臭を伴った嘔吐にいたることもあります。
病状の主体がアレルギー反応であることからも、アニサキスに対するアレルギー反応として、蕁麻疹やアナフィラキシー様症状(息苦しさ、喘鳴、血圧低下、意識障害など)を呈することもあります。
診断していく上では、問診での食事歴(とくに生の魚介類の摂食)と症状の経過を聴取することがとても重要です。
問診で胃アニサキス症が疑われる場合、胃カメラ(胃内視鏡検査)が第一選択となります。内視鏡により胃粘膜に刺入した長さ2~3cmの細長く白い虫体が確認され、それを鉗子で抜去することによって診断・治療を同時に行うことが可能です。
腸アニサキス症では内視鏡での直接確認は困難で、腹部CT検査での限局性の腸管浮腫による腸管壁肥厚、局所性の腹水などの所見が診断の助けとなります。
血液検査で白血球の一種の好酸球が増加していることも、診断する上で役立ちます。ほかにアニサキス特異的IgE抗体などもありますが、アニサキス症であっても陰性のことは多く、陰性だからアニサキス症が否定できるというものでもないため、実臨床ではあまり行われていなかったりもします。
胃アニサキス症治療の第一選択は、胃カメラを用いての虫体摘出です。摘出後はほとんどの場合で、速やかに症状が改善します。
腸アニサキス症では内視鏡的に摘除することはできず、またアニサキスを駆逐する薬剤などもないため、保存的治療を行います。アレルギー反応を抑え、疼痛抑制・腸閉塞予防を目的として、デキサメタゾンなどのステロイドや、強力ネオミノファーゲンシーなどの静脈注射、ステロイド・抗ヒスタミン薬の内服治療などを施行します。通常は1週間以内に死滅し、症状もそれに伴って改善していきます。ただし重症例や腸閉塞様にいたった症例などでは、入院での絶食・補液管理を要することもあります。また胃アニサキス症が疑われる場合であっても、すぐに胃カメラが行える状況にない場合などでは、腸アニサキス症と同様の保存療法が採られることもあります。
アニサキス症では、予防も大変重要です。魚介類を十分に加熱(60℃以上で1分以上)もしくは冷凍(−20℃で24時間以上)することで、アニサキスは死滅します。醤油・酢・わさび程度ではアニサキスをやっつけることはできません。アニサキスの幼虫は通常魚介類の内臓に寄生しているのですが、漁獲後に中間宿主が死ぬと時間経過とともに筋肉や皮下に移動することがあり、調理前の目視だけで完全に除去することは難しいとされています。
1.症状のある胃アニサキス症です。刺入部を中心に浮腫による隆起がみられます。
2.鉗子で抜去すると…
3.刺入部を中心にびらんの形成が認められます。
4.摘出したアニサキス虫体です。
5.こちらは無症候例です。先程のものと比べると、周囲の浮腫が軽微です。
6.鉗子で抜去しようとすると…
7.生きているのでよく動きます。TOP