ピロリ菌が胃に感染すると持続的な炎症を生じることによって、慢性的な胃粘膜萎縮の進行が惹き起こされます(慢性胃炎)。この炎症の過程において胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを生じ、さらには胃内で粘膜細胞ががん化したものが胃がんとなります。胃粘膜萎縮の進んだ状態ほど胃がん発がんのリスクは高まるとされており、そのような状態ではもちろんですが、ピロリ菌感染後まだ萎縮が進んでいない状態で除菌をすることによって、胃がんの発生しやすい母地を作らないことの意義は非常に大きいといえます。胃がんの内視鏡切除後にピロリ菌を除菌することによって胃がんの発生頻度を約1/3に減らせることが報告されているほか、非がん患者(慢性胃炎患者)におけるピロリ菌の除菌治療によっても除菌後の胃がん発生が約40%減少することも分かっています。世界保健機関(WHO)も胃がん対策としてのピロリ菌検査と除菌治療を2014年に勧告しています。我が国におけるピロリ菌除菌の保険適用としては、下記の疾患とされています。
- 内視鏡検査(胃カメラ)において胃炎と診断された方
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 早期胃がんに対する内視鏡治療後の方
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
これら以外の方においては、除菌治療は自費診療の対象となります(ピロリ菌検査は行われており、陽性ではあるものの上記①~⑤に当たらない場合は、除菌治療は自費診療ということになります)。しかしながらピロリ菌の検査だけでは、その時点での胃がんの有無は分かりません。前述のようにピロリ菌は胃がんの発生に繋がるものであるので、ピロリ菌検査が陽性の(ピロリ菌がいる)時点で、胃がんの有無をしっかりと胃内視鏡検査(胃カメラ/上部消化管内視鏡検査)で確認することが重要であるといえます。またピロリ菌検査陽性の方はほとんどで胃内視鏡検査上の胃炎が確認されますので、保険診療での除菌ができるということになります。胃がんを見過ごすリスクがあることと経済的なことのいずれの観点からにおいても、ピロリ菌検査陽性の際には胃カメラ検査を受けていただいた方が良いと考えられます。しかしながらどうしても胃カメラを受けたくないという方ももちろんいらっしゃいますので、当院ではそのようなニーズにも対応できるよう、自費診療でのピロリ菌検査・治療にも対応しております(自費診療だと診察・一次除菌療法・除菌効果判定検査で計約18,000円の費用がかかります[ただし検査法や処方薬によって多少の違いがあります])。たとえば、胃がんリスク検査(ABC検診)陽性(B群・C群など)だけれども、どうしても胃カメラを受けたくない方などは適用となります。詳しくは診察時にお尋ねください。ただ、ピロリ菌を除菌してもその時点で存在する胃がんが治る訳ではありません。私たち消化器内科医としては、皆さまに健康で長生きしていただくためにはピロリ菌除菌の前に、ぜひ胃がん早期発見のための胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けていただきたいというのが本音です。













