便秘症というと、女性で多くとくに原因もなく便が出にくくなるアレ、という感じを持たれる方は多いかと思います。これは機能性便秘とよばれるもので、世の中の便秘の多くはこれにあたりますが、便秘にはほかにも様々な種類があり、以下のように分類されます。
便秘症
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便秘症

便秘症というと、女性で多くとくに原因もなく便が出にくくなるアレ、という感じを持たれる方は多いかと思います。これは機能性便秘とよばれるもので、世の中の便秘の多くはこれにあたりますが、便秘にはほかにも様々な種類があり、以下のように分類されます。
これらは最終的には便が出にくくなるという共通点がありますが、その原因は様々であり、診断・治療していく上では注意していく必要があります。
機能性便秘は、器質的便秘・症候性便秘・薬剤性便秘などの原因となるようなものがなく生じる便秘で、大腸の運動障害(便を運ぶ動きの問題)によって引き起こされる便秘の総称です。機能性便秘は、以下の3型に分類されます。
大腸通過遅延型(結腸通過遅延型)
便の大腸の通過が、ゆっくりになってしまった結果生じる便秘です。便の大腸通過時間と硬さとの間には相関関係があり、大腸に便が滞る時間が長くなるほど便は硬くなっていきます。このタイプでは腸管の筋層内にある、消化管運動のペースメーカー的な役割を担うカハール細胞が減少していて、このことが原因の一端となり、便秘を生じているとされています。悪化すると難治性となることもあります。
大腸通過正常型(結腸通過時間正常型)
最も頻度が高く、世の中で便秘とされている方の多くはこのタイプです。症状としては不快感や残便感が主体であるにもかかわらず、実際には便は直腸には滞ってないことも多いです。水分摂取が極端に少なかったり、食事量が少なかったり、食事内容に問題があったりなど(水溶性食物線維の摂取が少ないなど)のほか、便を我慢する必要がある環境や、ストレスなどとの関連も報告されています。
排出障害型(骨盤筋群協調運動異常型)
最も重篤感が出るのが、このタイプの便秘です。通常わたしたちが排便する際には、直腸内圧が上がって便を押し出そうとする力が働く時に、それと同時に肛門圧が下がって(肛門が開いて)排便にいたります。このタイプではこの協調運動が障害されているため、直腸内圧と一緒に肛門圧が上がってしまうため排便に強い困難を伴います。協調運動障害よりも、直腸の感覚低下や収縮力の低下などが主原因であったりすることもあります。
この分類のほか機能性便秘を、弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘の3型に分類したりすることもありますが、痙攣性便秘は過敏性腸症候群(IBS)との関連が非常に強く、過敏性腸症候群の便秘型として扱われていたりもします。また食事由来の便秘症を独立させて、食事性便秘とすることもあります。
機能性便秘の診断にあたっては、まずは本当に機能性便秘なのかを鑑別することが重要です。問診で症状・既往歴・薬剤歴などを聴取していき、症候性便秘や薬剤性便秘などを除外していきます。症候性便秘であれば原疾患の治療が、薬剤性便秘であればその原因となっている薬剤の代替薬への変更が、それぞれ便秘症の改善にもつながってきます。
検査として最も重要なのが、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)です。便秘の原因が大腸がんによる腸管の狭窄であった場合、検査をせずに漫然と薬物療法を行っていると大腸がんの進行に伴って腸閉塞などの合併症を生じたりするリスクがあることはもちろん、大腸がんの発見が遅れることでがんを根治できる可能性が経時的に徐々に減っていくこととなってしまいます。とくに40代以上の世代での便秘においては、まずはこの大腸がんによる器質的便秘を除外することが非常に大切なこととなります。
機能性便秘の検査としては、放射線不透過マーカーを服用して経時的に腹部レントゲン写真を撮像する大腸通過時間をみるための検査、直腸内にバルーンを入れて膨らませた際の肛門の反応をみる直腸肛門機能検査、バリウムを混ぜた疑似便を直腸に挿入して透視下に直腸の形態異常や運動をみる排便造影検査などがありますが、これらは治療抵抗性のある難治性の便秘に対して一部の専門機関で行われているという状況です。
治療の中心は薬物療法となります。機能性便秘の薬物療法は昔から代わり映えのしないものでしたが、2010年代に入ってから立て続けに新しいお薬が登場し、その進歩は近年著しいものとなっています。
酸化マグネシウム
昔から使われていた、便秘の代表的な治療薬です。昔からとはいっても、現代の便秘治療でも治療の核をなすもので、非常に有用なお薬であることに変わりはありません。浸透圧性下剤といわれるものの一つで、便の水分を保ち軟らかくする作用があります。酸化マグネシウムは刺激性下剤などとは異なるいわゆる「癖になりにくい」お薬とされていて、多用することによってやめた時に開始前よりも便秘が悪化するということがありません。ただし腎臓の機能が低下している方では使用できなかったり、またとくにビタミンD服用中の方などでは高マグネシウム血症を生じたりすることもあるので、その点での注意は必要です。ラクツロースやソルビトール、ポリエチレングリコールといった薬剤も、この浸透圧性下剤の一種です。
ポリエチレングリコール
ポリエチレングリコールは浸透圧性下剤の一つで、以前から大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の前処置に用いられてきた薬剤です。この薬剤の保険適応が便秘の治療にも広がり、2018年から本邦における慢性便秘症用の治療薬としての販売が開始となりました。欧米では我が国に先駆けて販売が開始され、各国のガイドラインでもとくに小児便秘症において投与が推奨されてきたなど、有効性とともに安全性も高い薬剤であるといえます。
刺激性下剤
大腸の粘膜を直接刺激して、蠕動運動を促進して腸の運動を活発化して便の排泄を促すお薬です。漢方系のセンナ・大黄など、アロエなどの生薬、ピコスルファートナトリウムなどがこれにあたります。短期間で用いる分には即効性もあって有用なお薬ではありますが、長期の服用によって薬剤耐性が生じると使用量が増加し、さらには腸管神経叢が障害されることがあります。そのため、薬剤中止後に開始前よりも便秘が悪化するといったことがあり、使いどころを考える必要のあるお薬といえます。大腸カメラの前処置や、便秘時の頓服としては重宝しますが、毎日漫然と服用し続けることはあまりお勧めできません。
膨張性下剤
ポリカルボフィルカルシウムがこれにあたります。腸内で水分を吸収してゼリー状になり、便秘時には便をかさ増しして軟らかくして改善し、逆に下痢時には余分な水分を吸収して便に形をもたせるという、ちょっと変わったお薬です。
上皮機能変容薬
比較的新しい便秘薬で、ルビプロストンやリナクロチドといったものが挙げられます。上皮機能変容薬とはいっても、粘膜の機能を不可逆的に変化させる訳ではありません。これらのお薬は腸液の分泌量を増やすことによって便の水分量を保ち、軟らかくするという作用を持っています。酸化マグネシウムが効きにくかったり、腎機能障害などで使えなかったりする方では、とくに有用性が高い薬剤となっています。
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これも新しい便秘薬の一つです。終末回腸(小腸の最後の部分)での胆汁酸の再吸収を阻害して大腸へ胆汁酸を送り込むことによって、胆汁酸の刺激で大腸の消化管蠕動運動を促進し、さらに大腸からの水分分泌も促すことによって排便を促します。まるで胆汁性下痢の機序を逆手に取ったようなお薬です。服用後数時間という早い時間で効果が出るため、メリットとしては計画的排便に繋げることができるということがあります。
漢方薬
センナや大黄などを含んだ刺激性のものが多いですが、大建中湯や桂枝加芍薬湯などの非刺激性のものもあります。
腸管蠕動改善薬
クエン酸モサプリドなど便秘症に対しての保険適応はありませんが、他の保険適応疾患と併存している場合には便秘にも有効な薬剤があります。
食事療法としては最もよくある便秘症である大腸通過正常型便秘では、食物線維を多く摂り便量を増加させることは、症状の改善に効果的です。有効性に関するいくつかの報告が挙がっておりますが、水溶性線維(こんにゃく・わかめ・こんぶ・果物・里芋・大麦など)が有効であるとされている一方で、不溶性食物線維(穀物・野菜・豆・キノコなど)に関しては、有効であるという報告、有効とはいえないという報告のいずれもがあり、効果がはっきりとしていないのが現状です。
そのほか排出障害型便秘では、和式便器の使用が効果的です。とはいっても今の時代は和式便器のあるご家庭はごく少なく、またあっても足腰の問題で和式便器での排便は難しいという方も多いでしょう。そのような場合は、洋式便器に足台を併用して排便をすることが有効です。通常は洋式便器に座った体勢だと直腸は曲がった状態となっていますが、足台を用いると疑似的に和式便器での排便姿勢に近くなり、それに伴って直腸の曲がりが和らいで排便しやすくなります。このトイレの足台は、通販などで安価で簡単に入手することが可能です。
便秘症は非常にありふれた、日常で大変よくみられる症候群です。しかしながらその原因には、大腸がんなど放置すると危険な疾患が隠れていることもあります。とくに40代以上では、便秘の原因として大腸がんを除外することは非常に重要です。便秘が続く場合はたかが便秘と高を括ることなく、まずは消化器病専門医・内視鏡専門医を受診してみることをお勧めいたします。
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