下腹部の張りというのは、臍より下のあたりの、重く張って膨らんだような不快な感じのことを指します。実際にお腹が膨らんで見える場合もあれば、外見は変わらなくても内部が張っているように感じる場合もあります。腸内に便やガスが溜まった状態のことが多いですが、他の臓器の問題であることもあります。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で原因が分かることの多い症状
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大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で原因が分かることの多い症状

下腹部の張りというのは、臍より下のあたりの、重く張って膨らんだような不快な感じのことを指します。実際にお腹が膨らんで見える場合もあれば、外見は変わらなくても内部が張っているように感じる場合もあります。腸内に便やガスが溜まった状態のことが多いですが、他の臓器の問題であることもあります。
便秘症(機能性便秘)
便が腸内に長く滞って、排便回数が減った状態です。便のみでなくガスも貯留することで、腸が張るため下腹部が張った感じとなります。実際に、下腹部がぽっこりと膨らむことも多いです。
過敏性腸症候群(IBS)
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)ではとくに炎症や腫瘍といった器質的異常がないにもかかわらず、下痢か便秘、もしくはその両方を繰り返す疾患です。下痢型・便秘型・混合型・分類不能型の4型に分類されますが、便秘型だけでなく下痢型においてもガスの貯留が増加していることは多く、それが下腹部の張り感の原因となります。また下痢や便秘はあまり目立たないものの、ガスによる張り感が主体となることもあり、これは分類不能型に含まれます。つまり過敏性腸症候群においては、すべてのタイプで下腹部が張ることがあるといえます。さらにIBSでは下痢型だけでなく便秘型においても、腸の運動自体は亢進しているということがあります。具体的には、腸が痙攣するように動くため便を押し進めることはできず、その場でこねくり回すような動きとなり、それが張り感やひどいと痛みの原因となります。
腸閉塞・イレウス
器質的疾患(腫瘍・捻転など)が原因で生じる腸の通過障害が腸閉塞、手術後の腸管麻痺などによって機能的に腸の動きが極端に落ちて流れなくなるのがイレウスです。腸内に内容物が貯留することになるため、下腹部を中心とした張り感が出ます。そのほか、便・ガスが出なくなる、行き場を失った内容物が逆流して嘔吐するなどの症状があります。
大腸がん
初期ではほぼ無症状ですが、腫瘍が増大して腸管内腔が狭くなると、便が通りにくくなって腫瘍の口側の腸に便が貯留し、さらにそれによってガスも貯まるようになり、下腹部の張り感が生じます。またがんがあることによって腸管の蠕動低下も生じ、これも張り感の原因の一端となります。またさらに進行して腹膜播種からがん性腹膜炎を生じたり、栄養状態の悪化から低蛋白血症を伴ったりするようになると、腹水を生じてこれも下腹部~側腹部の張り感の原因となります。
空気嚥下症(呑気症/どんきしょう)
無意識に空気を飲み込んでしまい、消化管にガスが溜まった状態です。空気の約78%は窒素が占めますが、窒素は酸素や二酸化炭素とは異なり、消化管からほとんど吸収することができません。そのためゲップとしてうまく出せなかったガスは、おならとして排出されるまでの間、腸内に長く留まって張り感が出る原因となります。ヒトは多少なりとも日常生活の中で空気を飲み込んでいますが、早食い、口呼吸、ガムや飴の過量摂取、緊張・ストレスなどによって、嚥下する空気の量が大きく増えることがあり、これが呑気症の原因となっています。張り感、ゲップ・放屁の増加のほか、吐き気が出たり食欲が落ちたりすることもあります。
腹水
肝硬変のほか、心不全、腎不全、がん(腹膜播種によるがん性腹膜炎や低栄養による)などによって腹水が貯留すると、下腹部~側腹部の張り感が出ます。
膀胱炎
膀胱炎では、下腹部の張り感を生じることがあります。頻尿や排尿時の痛みを伴うことが多いです。
婦人科疾患
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮がん、卵巣腫瘍、月経困難症、月経前症候群(PMS)などが、下腹部の張り感の原因となります。
妊娠
初期においてもホルモンバランスの変化などから、下腹部の張り感が自覚されることがあります。
下腹部の張り感は、様々な病気で生じる症状です。張り感以外にどのような症状があるかは、原因を探るうえで重要な情報となります。たとえば便秘がちで下腹部が張っていても、若い方で血便がないような場合では、十分な水分補給、水溶性食物線維(海藻、大豆など)に富んだ規則正しい食生活、排便を我慢しない、体に合ったプロバイオティクスの服用などを心掛けることで改善するようであれば、医療機関受診の必要性はそこまで高いとは言えません。その一方で、同じように便秘がちで下腹部が張っている状況でも、便に血液が混じる場合や、中高年以上の方などでは、大腸がんなど発見が遅れると致命的となる重大な疾患のこともあるため、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の必要性が高いといえます。
市販薬で改善する場合であっても、長く使用する必要があったり、その他の症状を伴ってきたりした場合などでは、そのまま漫然と続けることなく適切なタイミングで専門医を受診するようにしましょう。
腹鳴(ふくめい)というのは、消化管の内容物やガスが蠕動運動によって移動する際に、ゴロゴロと自覚されたり音が鳴ったりすることを指します。腹鳴自体は生理的な現象で、健康な人にも日常的に起こるものです。しかしながらその頻度が極端に増えたり、張り感や痛み、便通異常などを伴ったりするような場合には、何らかの病気、とくに腸疾患が背景にある可能性を考える必要があります。腹鳴は消化管の内容物やガス、蠕動運動の状況で生じるものであるため、その状況は連続的に変化していきます。空腹時に多い場合がある一方で、食後で増えたり、食事内容やストレスなどの影響を受けたりもします。
感染性胃腸炎
細菌・ウイルスなどの病原体が感染し、嘔吐、下痢、腹痛などが生じます。腸管内の水分が増え(粘膜の炎症で分泌液が増えたり、水分の吸収が落ちたりすることによる)、腸内環境(腸内細菌叢など)の乱れでガスの発生が増加している中、消化管蠕動運動が亢進することで腹鳴が増大します。
過敏性腸症候群(IBS)
便秘や下痢といった便通障害があり、それに関連して腹痛があるのが本疾患の特徴です。下痢型では食物の消化管通過時間が短くなっているため十分に水分が吸収されず、また蠕動運動が亢進しているため、これが腹鳴の原因となります。便秘型ではガスが発生しやすく、腸管の蠕動運動が低下していることもありますが逆に亢進していることも多く、便やガスを肛門側へ運ばずに痙攣してこねるような動きをすることで、腹鳴や腹痛を生じやすくなります。またガスの増加が主体となるタイプもあり、その場合も腹鳴の要因となります。
炎症性腸疾患(IBD)
慢性的な腸炎を原因不明に生じるもので、潰瘍性大腸炎やクローン病などがこれにあたります。炎症によって便中の水分が増加し、ガスも生じやすく、また炎症の刺激で蠕動運動が亢進することが、腹鳴が増大する原因となります。
便秘症(機能性便秘)
蠕動運動自体はあまり亢進することはなく、通常ないし低下していることが多いですが、ガスの発生増加が腹鳴に関係することがあります。
大腸がん
腫瘍が小さいうちには自覚症状はありませんが、大きくなってくると腹鳴を生じることがあります。腫瘍による内腔の狭小化に起因する便の通過障害が主要因のため、腹鳴がある状態だと多くの場合で便通異常を伴います。
腸閉塞
進行すると蠕動が極端に低下して腸雑音が消失しますが、初期だと腸が激しく動き、腹鳴が亢進します。
空気嚥下症(呑気症 /どんきしょう)
空気を嚥下してしまうことで、ガスが胃腸に貯留します。ゲップで出なかったガスは放屁されるまでの間、腸内をもまれながら移動していくため腹鳴の原因となります。早食い、ストレスなどが原因となります。
腸内細菌叢の乱れ
腸内細菌叢は、腸内環境を構成する一要素で、腸内フローラともいわれます。ヒトの腸内には様々な種類の細菌が無数に生息しており、その種類・比率は状況に応じて変化しています。いわゆる悪玉菌といわれるような、便通障害やガスの発生の原因となるような菌が増えると、腹鳴が増大することとなります。
空腹期収縮
おなかが空いたときにグーっと音が鳴るのは、空腹期収縮という正常な生理現象です。胃内に長く食物が留まることがないよう、胃の中を空っぽにするために強い蠕動運動が生じ、その後に十二指腸、空腸へと、腸管の収縮は肛門側へと続いていきます。これによって、腹鳴が生じることとなります。同じようにおなかが空いていても、腹が鳴る時と鳴らない時があるのは、主に内容物やガスの状況によるもので、空腹期収縮はいつも私たちの体の中で日常的に起きている正常な現象です。
心理的ストレス
強い不安や緊張を感じると、自律神経の乱れが消化管蠕動運動に影響し、腹鳴を生じることがあります。
症状が腹鳴だけの場合は、あまり問題とならないことが多いです。早食いが習慣となっている方は、ゆっくりよく噛んで食べることで、腸内のガスを減らすことができます。食物線維やFODMAPを摂り過ぎている場合もあり、これらを減らすことで改善が望めることもあります。また過度なストレスを避け、十分な休息・睡眠、規則的な生活リズムを整えることも有効です。入浴は腸管を温め、リラックスもできるため効果的とされています。
ただし他の症状を伴いそれが改善されないような場合は、消化器病専門医・内視鏡専門医を受診した方がよいでしょう。大腸カメラ(大腸内視鏡検査)をはじめとした検査での原因疾患の鑑別、適切な治療へとつながっていきます。
下痢とは、通常よりも便中の水分が増えて軟らかくなった状態で、水分量が増えるに従い、軟便、泥状便、水様便と徐々に形を失っていきます。多くは排便回数の増加も伴い、急激に生じて徐々に改善することもあれば、慢性的に持続することもあります。また腹痛、腹鳴(ゴロゴロ音)、張り感など他の症状を随伴することも少なくありません。いつも以上に水分を摂る必要がある一方で、トイレに頻繁に行かなくてよいようにと水分摂取を怠りがちになる方も散見されます。そのため気付かないうちに体から水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が失われて脱水気味となり、倦怠感やめまいなどを伴うこともあります。ウイルスや細菌などの感染が原因の場合は、大抵は1週間程度、長くても2週間以内には下痢が改善することがほとんどです。それ以上長引く時には、感染以外の原因を十分に考える必要があるといえます。
感染性胃腸炎
ウイルスや細菌などに感染することで、急性の嘔吐・下痢・腹痛、ときに発熱・血便などを生じます。多くの場合は数日で改善し、2週間以上下痢が続くことは少ないです。病原体に汚染された食品が原因で感染した場合は、食中毒とも呼ばれます。
過敏性腸症候群(IBS)
腹痛を伴った排便障害が慢性的ないし断続的に続く一方で、大腸カメラなどでの検査上は異常がみつからない疾患です。下痢が症状の中心となる下痢型のほか、便秘型、混合型、分類不能型といったタイプがあります。
炎症性腸疾患(IBD)
慢性的な下痢を生じる原因不明の病気です。患者数では潰瘍性大腸炎が最も多く代表的な疾患といえ、次いでクローン病が潰瘍性大腸炎の1/3弱と続き、腸管ベーチェット病などはIBDとしては比較的まれです。いずれも下痢、血便、腹痛などの症状が慢性的に続きますが、継続的な治療を行うことで症状は改善し、社会生活への影響を小さく抑えることができるようになります。
虚血性大腸炎
大腸への血流が途絶えることで、粘膜傷害から血便を生じます。一過性型が最も多く、突然の腹痛(多くは左下腹部痛)の後に排便に至り(最初は普通便で、徐々に軟便~泥状便)、途中から暗赤色の血液を混じるようになります。1~2日程度の経過で今度は便が出なくなりこの過程で腹痛は消失し、数日~1週間程度で普通便に戻るようになります。ただし狭窄型で保存的加療での改善がない場合や、血流が戻ってこない腸管壊死を伴う壊疽型では、外科的手術を行うこととなります。
大腸がん
大腸がんでは腫瘍が小さなうちは目立った症状がありませんが、がんが大きくなってくると、便秘を生じたり、便秘・下痢を繰り返すようになったりします。狭窄部で便が通り辛くなって便秘状態となり、蠕動が亢進した際に急激に内容物が押し出され、続けざまに口側のまだ硬くなっていない便までもが亢進した蠕動で排泄されると下痢状態となります。ただし直腸がんでは、下痢を起こすことはあまりありません。またまれではありますが、大腸がんが壁外へ浸潤して小腸内腔へ穿通すると、小腸内の液状の内容物がそのまま大腸に流れ込むこととなるため、頻回の水様便を伴うようになります。
薬剤性
様々な細菌感染症に対して用いられる抗菌薬は、腸内の細菌にも影響を及ぼします。それによって腸内細菌叢が乱れると、抗菌薬起因性急性出血性腸炎や偽膜性大腸炎が生じ、粘血便を伴った下痢を生じます。また酸分泌抑制薬の一種であるPPI、とくにランソプラゾールや、消炎鎮痛剤であるNSAIDsなどが原因となって生じるcollagenous colitis(膠原線維性大腸炎)は、慢性的な水様便の原因となります。そのほか、がんなどに対して用いられる免疫チェックポイント阻害薬では、副作用として潰瘍性大腸炎(UC)に類似した腸炎を生じることがあり、irAE大腸炎と呼称されます。下痢、粘血便など、症状はUCと類似していますが、内視鏡所見上は血管透見の消失や粘膜粗造などが認められる一方、病変の非連続性、縦走潰瘍(クローン病で多い)など、UCとはやや異なった見え方をすることも多いとされています。
内分泌疾患
甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能低下症、一部の糖尿病などで、下痢を生じることがあります。
下痢を生じた際にまず気を付けなければならないのは、脱水を予防することです。ナトリウムやカリウムなどの電解質も併せて失われているため、これらも補える経口補水液やスポーツドリンク(後者の場合は併せて水も飲む)が最適です。症状の出方から感染性が疑われて程度も軽い場合には、しっかりと水分を摂りつつ、多少食欲が出てきたら、軟らかめの炭水化物(お粥やうどんなど)から摂取していくようにし、冷たいもの、脂もの、生もの、カフェイン、過度の香辛料、飲酒・喫煙などは控えるようにしましょう。
ただし下痢が激しい場合や、その他の随伴症状が強い場合、また下痢の程度が軽度であっても2週間以上続く場合などでは、消化器病専門医・内視鏡専門医を受診するのがよいでしょう。症状に応じての服薬加療、また必要であれば大腸カメラ(大腸内視鏡検査)などでの精査を行うこととなります。
下痢は軽度で一過性のことも多い一方で、長く続く場合には重大な病気が潜んでいることもあります。改善が見られない場合には、放ったらかしにすることなくきちんと医療機関を受診することが推奨されます。
便が細くなった際にまず原因として思い浮かべられるのは、大腸に何らかの病変があって腸管の内腔が狭くなっているという状態でしょう。たしかにそれは原因の一端ではありますが、それ以外にも食事の内容や、腸の動きの問題などがもととなって便が細くなることもあります。また大腸以外でも、肛門疾患によって便が細くなってくることもあります。
大腸がん
大腸がんであっても、まだ早期がんである場合や、進行がんとなっても腫瘍がそれほど大きくなっていないうちは、便が細くなることはあまり多くはありません。腫瘍が徐々に増大して腸の内腔が狭くなってくると、そこを通過することで便が細くなります。お尻に近い直腸やS状結腸に全周性の腫瘍が形成されると、細い便となりやすいです。便が細いだけでなく排便時の腹痛が強くなっていたり、便に血が混じるようになっていたりする場合には、とくに注意を要する状態であるといえます。
過敏性腸症候群(IBS)
便秘型や混合型の便秘時では、便が細くなることは多いといえます。これは腸管壁の痙攣によって便がうまくまとまらなかったり、腸管が弛緩しないことから腸管径が小さくなっていたりすることが要因となります。また下痢時にも便が十分に形成されずに、軟らかいまま細い軟便として排泄されることがあります。
便秘症(機能性便秘)
食物線維の摂取量が少ないことは機能性便秘の原因となり、便が細く少量になります。高食物線維・低脂肪食を摂取することで便のかさが増し、それによって太く多量の便となり、逆に低食物線維・高脂肪食で、便が少量で細くなるということが明らかにされています。
炎症性腸疾患(IBD)
潰瘍性大腸炎、クローン病といったIBDでは、大腸粘膜の炎症によって腸管が十分に弛緩・拡張することが阻害され、それによって便が細くなります。また後者の場合は炎症が深い層にまで及ぶため、炎症・治癒が繰り返されることで強い線維化が形成され、それによる便の細径化がみられることもあります。
直腸瘤
排便時の圧力で、直腸の前壁側の腸管壁が前方へ袋状に膨らんでしまう疾患です。女性では直腸の前側に膣があることによる壁の脆弱性で発生しやすいため、患者さまのほとんどは女性です。排便前に肛門と膣口の間が膨隆したり、排便時に自分で膣に指を入れて抑えると便が出やすくなったりします。直腸内にバリウムを含んだ疑似便を注入し、透視下で実際に排便し、排便時に直腸が前方へコブ状に突出していることを確認することで、確定診断にいたります。便が硬いほど、排便時にいきむほど生じやすいため、軽度であれば食事や生活習慣の改善と下剤の服用などで、便を軟らかくすることで改善します。またトイレに足台を用いることで、便の通り道の最後の屈曲部である直腸肛門角が鈍化するため、このことも排便時にかかる圧の軽減につながり、症状の緩和に役立ちます。日常的に肛門部を数秒~10秒程度キュッと締め上げる骨盤底筋体操をすることも、改善に有効とされています。ただしこれらの保存的治療でも改善しないような場合には、外科的手術を要することもあります。
肛門疾患
裂孔を繰り返すことで肛門部に線維化を生じると、肛門が硬く拡がりにくくなるため、便が細くなります。また肛門管がんがある程度発育すると、それによる便の通り道の狭細化が生じます。
便が細いことが一時的で、そのほかに目立った症状がないようならばあまり問題とはなりませんが、血便、腹痛、体重減少を伴う場合や、血縁に大腸がんの方がいる中高年以上の方などでは、大腸がんをはじめとした深刻な病気の一症状のことがあり要注意です。そのため気になる症状を伴っていたり、慢性的に続いたりする場合には、早めに消化器病専門医・内視鏡専門医を受診し、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)などの検査で原因を調べるようにしましょう。
便秘とは、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態とされています。具体的には便の回数が減っていたり、便が硬く兎糞状(小さくコロコロした便が多数出る状態)であったり、排便時に強くいきむ必要があったり、排便に困難感を伴ったり、残便感があったりするような状態です。便に含まれる水分量の低下、腸管の蠕動運動の低下、食物線維摂取量不足、物理的な腸の通過障害など、その原因は様々です。
機能性便秘
便秘の原因として最多です。器質的便秘(物理的に腸が狭くなることによる便秘)、症候性便秘(他の疾患の症状の一つとしての便秘)、薬剤性便秘(薬剤によって惹起される便秘)のいずれもが否定できる場合に、機能性便秘とされます。一般に便秘といった際に皆さまが思い描かれるのは、本疾患でしょう。
便秘型過敏性腸症候群
下痢や便秘などの便通異常があり、それに腹痛や腹部不快感を伴う疾患が、過敏性腸症候群(IBS)です。便秘型のほか、下痢型や混合型などのタイプもあります。便秘型過敏性腸症候群では、腸が動いていてもその動きが痙攣様となっていて、便が前に進んでいかないという状態を生じることがあります。この過剰な痙攣様の動きが生じると痛みにつながり、結果的に便が進まずそれでいて水分は経時的に吸収されていくため、便はコロコロと硬く出にくくなります。
大腸がん
早期がんや、進行がんであっても腫瘤が小さいうちは便秘を生じることは多くはありませんが、腫瘍が増大して腸管内腔が狭くなってくると、便の通過障害が起きて便秘の原因となります。腫瘍部では内腔が狭いため便が通らず、その口側にどんどん便が溜まっていき、この時は便秘状態となります。便が多量に溜まって口側の圧が上がると、狭い内腔を硬くなった便が通り、それに続けてより口側のまだ軟らかい便も一気に流れ出ていくため、これが下痢状態として感じられます。そのためある程度進んだ大腸がんでは、便秘と下痢を繰り返すと感じられることが少なくありません。
腸閉塞・イレウス
腸の内容物が前に流れていかなくなる状態です。腫瘍によって詰まったり、腸が捻れて通らなくなったりなどの物理的な原因によって生じるものを腸閉塞、外科的手術後の侵襲などによって腸管が麻痺状態になって動かなくなることが原因の場合をイレウスとよびます。いずれも腸の中を内容物が進んでいかないため便秘状態となりますが、腹部の強い張り感、嘔気・嘔吐などを伴います。入院での安静、絶食補液、胃管(鼻から胃へ管を入れ、内容液を持続的に体外へ排出する)・イレウス管(鼻から入れる長い管で、透視下に小腸まで進めて内容液を持続的に体外へ排出する)を要したり、さらには手術が必要となったりすることもあります。
炎症性腸疾患(IBD)
普通は下痢を生じることがほとんどです。ただし潰瘍性大腸炎の直腸炎型では、炎症が直腸のみに限局するため下痢を生じず、炎症によって排便時の蠕動運動が正常に機能せず、便の出にくさや残便感を伴った便秘となることがあります。またIBDでは、炎症が改善した後の瘢痕によって通過が悪くなって便秘を生じることがあります。これはクローン病での頻度が高く、潰瘍性大腸炎ではあまり見られません。原因としては、潰瘍性大腸炎よりもクローン病の方で炎症が腸壁の深層にまで及ぶため、より強く線維化が生じることが挙げられます。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンには、消化管の蠕動運動を促進する働きがあります。そのため甲状腺機能亢進症では下痢を生じやすく、逆に低下症では便秘となりやすくなります。また本疾患では体全体の代謝も落ちるため、それによる腸管の動きの弱まりも加わり、より便秘となりやすくなります。
パーキンソン病
便秘を伴うことが非常に多いです。原因としては自律神経障害で消化管蠕動運動が低下することに加え、排便に適した姿勢の維持の困難、適度な腹圧を自力でかけられなくなる、抗パーキンソン病薬の副作用などが挙げられます。
うつ病
本疾患では、複合的要因によって便秘が起きやすくなっています。自律神経障害による蠕動運動の低下、セロトニン分泌異常、意欲低下からの水分摂取・食事摂取不足、腸内細菌叢の乱れ、抗うつ薬の副作用などが原因となります。
薬剤性便秘
抗うつ薬、抗パーキンソン病薬のほか、麻薬系鎮痛薬、抗ヒスタミン薬(アレルギーなどで用いられる薬剤の一種)、カルシウム拮抗薬(降圧薬、抗不整脈薬)、DPP-4阻害薬・GLP-1アナログ(抗糖尿病薬)、一部の抗がん剤、NSAIDsなどが便秘の原因と成り得ます。
ほかに症状がなく便秘が軽度の場合は、生活習慣を工夫することで便秘の改善を目指してみましょう。十分な水分を摂取し、食物線維の中でもとくに水溶性食物線維を多く含む海藻、大豆、野菜(キャベツ、オクラ、大根など)、果物(キウイ、リンゴ、ミカンなど)などを摂取し、便をゼリー状にすることは便秘の解消に効果的です。整腸剤や発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)も、腸内細菌叢を改善して腸内環境を整えるため有効です。食後とくに朝食後は、胃に食べ物が入ることで大腸の蠕動が刺激される胃結腸反射が起こりやすいため、朝の排便習慣を付けることも効果的です。さらに適度な運動も、排便を促します。排便時の姿勢としては、疑似的に和式便器スタイルに近付けられるようにトイレの足台を用いることで、便の通り道の最後の曲がり角である直腸肛門角が鈍化するため、スルっと排便しやすくなります。
ただし、徐々に悪化する便秘、腹痛や嘔吐を伴う、便に血が混じる、体重の減少を伴う、中高年になってから便秘が出現したなどの場合では、早めの医療機関の受診が推奨されます。便秘はありふれた症候ですが、その裏には深刻な病気が隠れていることがあります。とくに中高年以降で発症して徐々に悪化している場合や、便に血が混じっているような場合では、大腸がんなどの重大な疾患のリスクがあるといえ、消化器病専門医・内視鏡専門医による大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が必要です。大したことがないから大丈夫だろうと放置することなく、気になる症状がありましたらばご相談くださいますようお願いいたします。
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